指示どうりの指づかいで弾けない時    

~実際のピアノレッスン現場より~

 
 

あなたがお母さんであっても、ピアノの先生であっても、こんな経験はありませんか?いくら注意しても、書いてある指遣いで弾いてくれない。直っても、次の日にはまた元に戻ってしまう。それで、苛々してしまう。

以下はそんな場面で、私が対応している方法です。何らかの参考になればと思います。大事なことは、子供もわかっていて変えようとしていること、でもうまくゆかない、ということ。なぜそんなうまくゆかない難しい方法でするのかわからない、という気持ちを持っていることを理解してあげることです。

また、子供たちに彼らの考えや意思を真っ向から否定してしまうのではなく、それらを一度はしっかりと受け止めてあげてください。それが、その子との信頼をさらに深く築くだけでなく、彼らにピアノを習うことに対する安心感と楽しみを広げてくれます。

指づかいいを守れないとき、指の形や大きさを一緒に見比べ話をしながら、なぜその指がその鍵盤に届かないかをゆっくり確認します。そしてその生徒の手の大きさにあった指使いは何か、本人が探す手伝いをします。 

 
 
 
 

「あなたは、ここに書いてある指づかいいがしっくりこないようね?どうしてかな、見てみよう。」

一緒に両手の手のひらを見て比べてみて、例えば、こんな会話。「・・ちゃんは、まだ手がこんなに小さいけど手のひらは大きいね、この指が長いね。この指はちょっと短め。この指と指の間はいっぱい開くかな。。この指はこんな風にも動くかな?」

「こんな風な手首の動きはしたことある?できると思う?」

「私がする動きとなんか違うね。どう違うかな?なんで同じにならないのかな?」

鍵盤に私の手を当てて、『見て。手が大きかったらこんなこともできるんだよ。こんな風に手を当てられたら、この指番号って、こんなに楽に守れるよね。』「でも・・ちゃんは、これくらいの大きい手になるのにもう何回か誕生日を待たないといけないね。・・ちゃんが今一番弾きやすいのってどんな風かな?」 

そうしたら、子供たちは、いろんな指で試して弾いてみます。それを一緒に真似して弾いてみてあげてください。

そうすると、子どたちは「私この指がいいと思うんだ」というような反応を返してきます。

「じゃあ、そうしよう。ここの指番号、ペケつけて書き換えとくね。この指番号と今の指番号で弾いた時、なんか違うかな?」

本人は弾き心地や、音の違いを喋ってくれます。

「私もこの本にあるのと、・・ちゃんの指使いの、ふた通りで弾いてみるね。どう、なんか違う?」

そのあと、大人の手には、指示してある指使いで出る音が、作曲者の欲しい音に一番近くなっている見たいよ、とそっと促します。

そして、本人が決めた指使いで弾くことを認めてあげます。そして、この指使いで出てくる音にどんな気持ちを感じるのかどんなイメージがあるのか、聞いてあげて、それがたとえ曲のタイトルと違っていても、すべて認めてあげます。

この一連の対話のち、まず生徒は自分が認めてもらえることにとても安心し、嬉しくなります。そして次の曲からは、その子供は指使いに対する配慮がたくさんできるようになり、なぜその番号がついているかを、まず考えます。また自分に合った弾き方だけでなく、自分の欲しい音を指で探し、自分の感じることを表現しようとする意識を待ち始めます。それは、決められたことを模範どうりに完全に再現するのとは根本がまるで違いますね。

ちなみに、自らの音楽解釈、表現に合わせた指使いの変更は、通常音楽院のレベルで学び、プロのピアニストは常に意識して取り組んでいます。